I HONESTY
LOVE YOU


「ほらアリオス起きて! いい天気よ!」
 穏やかな暗闇に、突然まぶしい光が差し込み、アリオスはそれに導かれるように目を開けた。
 愛しい天使がカーテンと窓を開け、温かな光とさわやかな風を部屋に取り込んでいる。
「なんだ・・・、もう起きる時間か?」
 アリオスは少し眠そうに、ゆっくりと体を起こし、傍らの目覚し時計に手を伸ばす。
 彼を覆っていたシーツが、衣擦れの音をさせながら落ち、上半身が露になる。
 裸の胸が剥き出しになり、アンジェリークは思わず顔を赤らめる。慌てて後ろを向き、何度見ても馴れるものじゃないなと思う。
「おいっ、まだ7時じゃねぇか。----って、何後ろ向いてんだよ」
「----なっ、なんでもない・・・」(///)
 アンジェリークは、恥ずかしくて堪らなくて、俯いてしまう。
 アリオスは、すぐにアンジェリークの態度にピンときて、喉をクッと鳴らすと、手早くガウンを羽織る。
「何恥ずかしがってんだよ、俺の裸なんて毎晩みてるじゃねぇか」
「----だって、そんなの・・・、っ、あっ・・・、・・・ん」
 アンジェリークがまだ云い終わらないうちに、アリオスは彼女を背後から抱きしめ、首筋に唇を寄せる。
「早く続きを云えよ・・・」
 アリオスは、可笑しそうにククっと笑いながら、アンジェリークの首筋に唇を這わせる。
「----もぉ、意地悪・・・」
 アンジェリークは、恥ずかしさの混じった、少し艶やかな声で彼を諌めるが、その響きは優しい。
 アリオスは、そんな彼女が誰よりも愛しくて、抱きしめる腕に力をこめる。
「昨日の夜の続きをスルか?」
 彼の囁く低い艶やかな声は、どんな媚薬にも勝る。
「だめ・・・、アリオスを早く起こしたのも、一緒に朝の散歩に行きたいからだもん・・・」
 アンジェリークは、何とか快楽の波を押し止め、やっとのことで、彼を早く起こした理由を言う。
 あまりにもの可愛らしい理由に、 アリオスは、フッと優しい笑みを浮かべ、名残おしそうに体を静かに離す。
「着替えてくる」
「うん」
 アンジェリークは、ドレッサーの前に立って、少し乱れた髪を直そうとしたとき、ふいに首筋に赤い痕を見つけた。
「あー、あー、あー! アリオス! 首筋はだめだって言ってるのに〜!」
 アンジェリークの恥ずかしそうな大声に、奥の部屋で着替え途中のアリオスは、可笑しそうに笑う。
 この瞬間が、何由も幸せだと、心から思う。
 彼は、手早く着替えを済ませると、笑いながら寝室に入ってくる。
「噛まれたって云えばいいじゃねぇか。----頭が銀色の蚊にな」
「ばかっ!」
 アンジェリークは、上目使いでアリオスを恥ずかしそうに咎めた。

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 早朝の、澄んだ、少しひんやりとした空気の中、二人は、湖の周りを散歩していた。
 この湖は、かつて、転生したアリオスが眠っていた場所だ。二人にとって思い出の場所。
「ほら、トロトロすんな」
「うん」
 先を行くアリオスに、アンジェリークは少し強く手を引っ張られて、着いてゆく。
 その力強さが、彼女にとって心地いい。
 アリオスは、ダーク・レッド地に、襟には黒地に紫のラインの入った切り替えのある革のジャケットに、黒のTシャツ、黒の革パンツといった装い。
 アンジェリークは、ピンクのワンピースで、スカート部分は薄いピンクの布がついている可愛い装いだ。
 二人の装いは雰囲気は違っていたが、互いの薬指に光る指輪と、首にかかる同じデザインのチョーカーが、二人に”永遠の誓い”を示していた。
 暫くして、湖の前に広がる草原にたどり着くと、二人は仲良く腰を下ろした。
「ここ、いつきても落ち着くね・・・」
「ああ」
 アンジェリークは、横に腰掛ける一番愛しい男性をじっと見つめる。
 光を弾いて七色の宝石にすら見える柔らかい銀色の肩までの髪、激しさと優しさが朦朧と交差する左右の色が違う不思議な瞳。筋の通った形のいい鼻、シャープなあごのライン。そして・・・、官能的な唇。どれもがアンジェリークを魅了してはやまない。
 アンジェリークの視線に気づき、アリオスは彼女に顔を向けた。
「なんだ?」
アリオスはアンジェリークにしか見せない蠢惑的な笑みを浮かべる。
「なんでもな・・・」
 アンジェリークは、体を震わせて、軽くくしゃみをする。
「おいっ、だいじょうぶか?」
「へい、平気・・・クシュン!」
「平気じゃねぇじゃねぇか!」
 アリオスは、慌てて革のジャケットを脱ぐと、アンジェリークの肩にかけてやる。
「ほら、これでも羽織ってろ」
「アリオス・・・」
 アリオスのジャケットはとても暖かくて、彼の匂いがする。まるで彼に抱きしめられているかのようだ。
 アンジェリークは、彼のジャケットをぎゅっと抱きしめる。
 その姿があまりにもはかなくて、一瞬、アンジェリークが消えてしまうような錯覚を、アリオスは覚えた。
「アンジェリーク・・・!」
 アリオスは、アンジェリークがどこかに行ってしまわないように、力強く抱きすくめる。
「アリオス・・・?」
「----消えるなよ、俺の前から、絶対に!」
 アリオスの激しい情熱に、アンジェリークは嬉しくて、だけど切なくて、彼の思いに必死になって答えるために、背中に腕を回す。
「----いつでもそばにいる、消えないわ。この命をかけても。だから、あなたこそ・・・、あなたこそ私を置いていかないで」
 アンジェリークは、彼が一度逝ってしまったことを思い出し、恐くなり、まわす腕に力をこめる。
「----愛している、おまえだけを・・・・心に誓って」
 アリオスは、優しく、そして深く、アンジェリークの唇を覆った。
 アリオス、私も愛してる・・・、この心に誓って。
 

ANGELIQUE
I never let you down.
I never let you go.
I take you through the years
I honesty love you.

コメント
甘々のふたりの第2弾。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、二人のコスチュームは「トロア」を意識したんですけど、私の表現力がへんで、
上手くいきませんでした。更新予定にない創作でしたが、書いてて楽しかったです。だけど、砂を9回は吐きました(笑)
取りあえずは、アリオス「トロワ」出演判明記念創作です。